野菜や米、卵など食品が並んでいる画像

「カフェはじめのいっぽ」は、子育て家庭を支援する子ども食堂※1や、認知症の方とその家族の交流の場としてNPO法人ケアットが運営するコミュニティカフェ。 

「カフェはじめのいっぽ」の内装

電気店の倉庫をリノベーションしたという建物。アンティークの小さなドアを開けると、柔らかいペンダント照明の光と骨董家具が温かく、なぜか初めて来たような気がしない懐かしさを感じる空間です。

「カフェはじめのいっぽ」の骨董家具
「カフェはじめのいっぽ」の骨董家具

 コープこうべさんが、フードロス対策として、まだ食べられる販売期限切れの食品を、地域のこども食堂・福祉施設に支援している事を知る機会があり、その支援先のひとつがこの「カフェはじめのいっぽ」で開催されている子ども食堂、「つながり食堂」でした。
2016年にスタートした「つながり食堂」、以前はバイキング形式で一緒に楽しく食べるスタイルで、地域の子供は誰でも参加できていました。昨年からは毎週金曜日の夕方、ひとり親世帯向けに手作りの弁当の配布とフードパントリー※2を無料で実施しています。ケアット代表の岡本芳江さんによると、コロナ禍で子どもの貧困問題が深刻になっており、生きづらさを感じる人に寄り添う新たな形で継続しているとの事。

「つながり食堂」で配布している手作りのお弁当
「つながり食堂」で配布しているフードパントリー

お弁当はすぐ近くにある、障がい者の就労支援事業所「つながり工房」のスタッフの方たちの手作り。お弁当作りで子供たちを支えているということが誇りや働きがいにもつながっています。
最近はフードロス問題への意識の高まりから企業からの食材提供も増え、コロナ禍の今こそ何か出来る事をという地域の方や一般の方からの寄付も多くなっているそうです。寄付で購入した冷凍庫の活躍もあり、材料の食材はほぼ支援でまかなえるようになるという良い循環が成り立ち始めています。

「カフェはじめのいっぽ」の骨董家具

カフェには骨董品や懐かしい雰囲気の物がたくさん置かれています。認知症ケアの「回想法」※3の考えを取り入れていて、昔の物に触れる事がリハビリの助けになるそうです。子供たちも「なんか懐かしい」と言って喜ぶそうです。

人の心の中にある安心感と懐かしさは、近い感情なのかもしれません。ゆったりとして温かみのある空間だからこそ、安心できるのだとも思います。私たちの仕事である空間づくりの重要性を改めて感じました。

カフェはじめのいっぽ」を訪れる人々の写真

沢山の寄付をしてくれる方の事をつながり食堂の子供に話すと、「自分も将来は、そんな大人になりたい」と言ったそうです。子供たちが家庭や学校以外の社会や大人を知る大切な場所にもなっているのだと思いました。

今、社会は未だかつてない大きな渦の中にあります。家庭以外の居場所を必要としている「子どもたち」「高齢者」「その家族」が、一息ついたり、悩みを話せる場所。食品を切実に必要とする人と、提供したいと思っている人をつなげる事。それを実現しようとする「人と人々」がいることを知りました。人がつながり、食べ物がつながり、世代がつながり、社会がつながる。循環型社会についても改めて考える機会になりました。

 良い循環を生むために、私ができるはじめの一歩は何だろうか?

Author:宗本陽子(WEST事業本部) 

NPO法人ケアット
コミュニティカフェはじめのいっぽ/つながり食堂
兵庫県神戸市東灘区魚崎北町4丁目3−15
http://caret-npo.org/cafe.html

◎「カフェはじめのいっぽ」を運営しているNPO法人ケアットは通常の寄付はもちろん、「モノキフ」や賛助会員など様々な形での寄付を募集しています。 

※写真はケアットより提供及び著者撮影

※1子ども食堂:子どもやその親、および地域の人々に対し、無料または安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供する社会活動のひとつ。

※2フードパントリー:企業・団体・家庭から寄付される食料を無料でひとり親家庭などへ直接配布する活動。

※3回想法:昔の懐かしい写真や音楽、昔馴染のある家庭用品などを見たり、触れたりしながら、昔の経験や思い出を語り合う認知症の心理療法のひとつ。

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