センバ×モノファクトリー 循環型社会に向けて

第2回目の“SEMBA Connect !”は、今夏社内向けに開催されたウェビナー“センバ×モノファクトリー 循環型社会に向けて”の内容をご紹介します。産業廃棄物を取り扱うことから始まり、今では未来の地球のために“資源循環システム”の構築と正面から向き合っている株式会社ナカダイ・株式会社モノファクトリーの代表取締役 中台氏と共に、船場が環境問題に対してできることは、何なのか?ディスカッションをしました。

Project Member / プロジェクトメンバー

  • 中台 澄之氏

    中台 澄之氏

    株式会社ナカダイ
    株式会社モノファクトリー 代表取締役

  • 神戸 暁

    神戸 暁

    株式会社船場
    ビジネスデザイン本部 re division

  • 岩井 隆

    岩井 隆

    株式会社船場
    PRODUCTION事業本部
    東日本division

【株式会社 ナカダイ】

誰かが不要と判断した“モノ”について、
「使い方を創造し、捨て方をデザインする」
=リマーケティングビジネスを展開。
http://www.nakadai.co.jp

【株式会社 モノファクトリー】

“発想はモノから生まれる”をコンセプトに、
業界の垣根を超えたモノの価値・本質を考える
ビジネスコンサルティングを行う。
https://www.monofactory.com/

廃棄物を新しい“モノ”として市場に戻す

ナカダイ・モノファクトリー 代表取締役 中台氏

株式会社ナカダイ(以下、ナカダイ)は総合リサイクル業で、ずっと業を成していました。リサイクル率も99%とある程度まで達成したので、リサイクルだけではない、新しい“モノ”の使い方を考えるフェーズに入った方が良いと考え、2016年頃からモノファクトリーで、廃棄物を新しい“モノ”として、再度マーケットに戻す=リマーケティングに特化してビジネスをしています。
ナカダイとモノファクトリーと2社になっているのは、廃棄物の処理を受けた会社が勝手にものを売ったり、使ったりすることは法律で禁じられているためです。ナカダイで産業廃棄物の適正な処理が終わったものを、モノファクトリーで購入し、新しい“モノ”にする。つまり「使い方を創造し、捨て方をデザインする」ことが、ナカダイ・モノファクトリーの仕事です。
循環型社会を目指していくために、日本は2000年頃から、3Rの考え方を推進してきました。廃棄物を減らすリデュース(Reduce)はもちろん、廃棄物が出てしまったとしても、使用済みの製品を繰り返し使うリユース(Reuse)、そしてエネルギーや別の形に変えて使うリサイクル(Recycle)です。しかし、これらとは違う別の形で廃棄物の使い方を探りたい!ということで、リマーケティングビジネスがスタートしています。
そして今後このリマーケティングビジネスのシェアをどんどん拡大していきたいと考えています。なぜなら我々のような会社の取扱量が増えれば増えるほど世の中からゴミとして捨てられるものがどんどん減っていくからです。

ディスカッションの様子

独自の循環型アイデアが武器になる

中台氏
2017年頃、服飾パーツを取り扱う会社のオフィスリノベーションプロジェクトに携わりました。本社にはボタンの博物館が併設してあり、それまで使っていたものを整理して、新しくした空間にその履歴を残したいとのご要望がありました。まずは中にあるものを完璧にリサイクルするため、旧社屋から運び出す時に細かく分別しました。
この時はものを運び出すのに総合運通業者に依頼しています。分別の指示をしっかり出して移動のプロに任せるのが非常に大切と考えています。引越しと似たような考え方です。通常の引越しはある場所から、別の場所に中のものを移動させます。今回は分別したものを、紙なら紙の問屋、鉄は鉄の問屋さんに、・・・と、ある場所から複数の場所に引越しさせてあげるイメージです。移動のプロに任せることで、リユースする家具なども破損なくきちんと運び出せます。通常の廃棄物屋に任せてしまうと壊してしまうこともあり、壊れてしまうとリサイクルもできなくなります。

船場 神戸
社内で使われていたオフィス用品なんかは、オフィスのリユース業者さんに持っていくのですね。ちなみにこの時の社屋全体の分別、撤去作業にどれくらい時間がかかりましたか?

中台氏
3日です。分別せずゴミというひとつのカテゴリーにしてしまうと、全部が無駄なモノになってしまうので、カテゴリー分けを細かくすることでリサイクル率を上げます。“撤去”に価値を見出して時間を割いてくれる施主さんであれば、どんな案件でも可能です。但し、新しいプランについて着工ギリギリまで議論を行ったため、余裕のない工期予定が組まれ、いらないものを全てゴミとして時間をかけずに一気にまとめて片付けるというような場合、この分別のためのスケジュールを取るのが難しい現状です。

船場 岩井
服飾パーツ会社の例では可動物を撤去して、仕分けしていくのに1週間くらい見積もっていて、実際にやったら3日で上手く運び出せたということですね。そのあと、固定物の解体などが始まるのですね。

中台氏
みなさんが普段考えるリサイクルカテゴリの分別と比較すると、30倍くらいさらに細かく分別しています。金属も、銅、真鍮、アルミ、鉄などより細かく分けることで、リサイクル率を上げて行きます。もちろん細かく分別したものを売る、販売先を多く持っているのも我々の強みです。

モノ:ファクトリー本店
(写真)モノ:ファクトリー本店

岩井
リノベーションが始まって、建築チームが入ると、その現場で出たガラなどは建築チームの方で分別や、処分をするのですか?

中台氏
建築系の躯体については、日本はリサイクル率が結構高いのです。建築のリサイクル法があるので、よっぽど小規模の工事でない限りほぼ完璧にリサイクルができます。

岩井
ゼネコンのような大手が手がける大型物件は、法律で決められているから、自ずとリサイクル率が高くなりますよね。我々は規模が小さいものを手がけることが多いので、そういう現場でもリサイクル率を上げて行くことが課題ですね。

中台氏
そうですね。それは独自に基準を作り解体工事に入る時点で、分別する仕組みが必要になってきます。 今回の案件はプロジェクトとして行ったので、工事前から始まり、中の整理・分別、撤去作業、リノベーション後、そして最後は長年働いてきた方をお呼びして、新しくなった空間をお披露目するセレモニーまでを事前に決めて、動画に収めました。同じような案件はいくつも手がけていますが、スタートの段階から我々のポリシーを理解していただいて、記録に残すとなると難しく、毎回できるわけではありません。それでも、取り組みの履歴として残る事は、とても大切だと考えています。
内装業者で、今回のようにリサイクル率を上げて行くことに着目している会社はまだいないと思うので、そこにいち早く手を伸ばしたことは今後強みになると思います。

神戸
我々が普段取り組んでいる案件でできそうなものはあると思います。最終着地点を見すえて、同じようにプロジェクト化して取り組みたいですね。

ディスカッションの様子

「廃棄物にしない」という目線を持つこと

岩井
直接ナカダイさんとご一緒したのではないのですが、プロジェクトを通じて、ナカダイさんを知るきっかけになったのが、有楽町ビルの10階にあるワーキングコミュニティ SAAIの案件です。元は三菱地所さんの電気クラブという名前のサロンだったものです。使う人がいなくなったので、再生し、時代に合わせて形を変えて投げ返そうということで、オフィスとして生まれ変わりました。
設計でご一緒させていただいた、株式会社オープン・エーさんがナカダイさんと取り組んでいるのが、スローバック(THROWBACK)という産業廃棄物を様々な家具として、生まれ変わらせるアップサイクルプロジェクトです。SAAIのホームページでも見ることができますが、例えば、フリーワーキングスペースで使用しているテーブル類がスローバックです。小学校の机をいくつか組み合わせて大きな机にしたものや、ソーラーパネルをそのまま天板にしたユニークなものです。小学校の机なんかは落書きもそのまま残っていたりして愛着が湧きます。他にも、自転車の車輪と、LEDのチューブを組み合わせて照明にしたり、プラスチックのパレットと座布団を組み合わせてソファーにしたりとさまざまな廃棄物が、素晴らしい家具として生まれ変わっています。中でも一番感動したのは、ダイニングにあるビッグテーブルです。様々な形の廃材をレジンで固めて一枚の大きな天板にしているんです。様々な木目を組み合わせているので、見た目も美しいです。
スローバックのコンセプトは、有楽町を再生したいというこのプロジェクトとも相通ずるものがあります。

SOLAR TABLE(ソーラーパネルテーブル)THROWBACK
SOLAR TABLE(ソーラーパネルテーブル)THROWBACK

中台氏
廃材を使って空間をまるまる演出すると、“エコ!”に偏ってしまい、使いづらさに繋がることもあります。スローバックを作るにあたって一番こだわったのは、我々が作った什器が、そのほかの新しい什器と共存しても全くおかしくないようにしたかったこと。そして居心地の良さは大前提で、そこに遊び心として“スローバックがあればいいね!”という思いです。これから出てくる新しい什器と常に共存していけることがとても大切です。

神戸
デザインがカッコいいというのはもちろんですが、単にカッコいいだけでなく機能性もきちんと兼ね備えていて、尚且つ、話のネタとしても使えるのがいいですよね。

中台氏
どんなものでも、「廃棄物にしない」という目線持つことでリ・デザインに繋がります。この目線があると、無いとではものの扱い方が変わるので、最後の、リ・デザインに結びつかない。
これからは自由にモノを捨てられない時代が来ることが予想されます。今後は循環型のビジネスモデルを構築していくことで、モノを売った量ではなく、どれだけ回収したかが、企業の価値を大きく左右します。

神戸
ここまで中台社長のお話しを伺いながら、船場のワークフローでも循環型のモデルが作れないかと考えていました。

リ・デザインのビジネスモデル

デザイナーのシゴトは既存の撤去工事が終わった後から始まるケースが多いのですが、もし早い段階から加われたら、既存をもっとデザインに活かせるかもしれません。モノファクトリーと協業することでより魅力的なアップサイクルの流れを生み出せそうですね。 「デザイン」と「現場」が密に連携して「再生」というサスティナブルな価値を創造できれば、船場にとっても新しいビジネスモデルになると思います。

中台氏
今後船場さんが本業にこの循環型の考えをどんどん取り入れることで、競合他者と差別化ができます。例えば同じ物件を作るときでも、クオリティーはそのままで、他社より、船場さんの方が環境への負荷が低くできれば、クライアントとしては船場さんに仕事を依頼すればするほど、環境に貢献できることになります。ですので、今のうちに自社で循環型の仕組みを構築しておく事が大切になってきます。自社で難しければ我々とコラボレーションすることで、理想の循環型の社会を一緒に創っていきたいですね。

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