大きな美術館の憩いの庭
GARDEN MARCHE に込めた想い
−デザインコンセプトと、それに込めた想いを教えてください。
平田:コンセプトは、“GARDEN MARCHE” です。アトレ様からは台湾に出店しても、「atre」らしさを残したいとのご希望がありました。「atre」らしさを紐解くと、日常をすこし上質なものにする空間、潤いのある生活ということでグリーンを多用しているんです。そういう要素を入れていきたいという点がひとつ。
また、商品とお客さまの距離が近くなるように、テナントと通路の境目をきっちり区切っていません。市場のように、商品が通路側にはみ出してきて賑やかな演出がなされているので、その部分は踏襲して行きたいと思い、“GARDEN MARCHE” をコンセプトに掲げました。
また、先に進行していた「Breeze南山」のデザインコンセプトは“AUTHENTIC MODERN MUSEUM” ゴージャスな美術館でファッションや食べ物を眺め、楽しめるような空間をイメージし着手していたので、「atre」との融合をどうしようかとても悩みました。最終的には大きな美術館の前に広がるお庭、というストーリーをイメージして全体をまとめました。
4階部分にはデッキがあり、そこにテラス席を並べました。その部分が一番外部と接することができる場所だったので、空中庭園に見立てて、“GARDEN MARCHE”の象徴的な部分となれば良いと思いデザインしました。
−「atre」の持つ世界観をどのように表現しましたか?またゴージャスな印象の「Breeze南山」とどの様に融合しましたか?
平田:もともと「atre」をそのまま台湾に持っていくつもりはありませんでした。日本の「atre」は高感度駅ビルではあるのですが、とても可愛らしいイメージが主だっています。台湾に持っていくにあたって、台湾の女性はどうだろう?と考えたときに、実年齢より大人びていて、セクシーさを好む傾向があるのでは、と気づき、大人っぽい要素を加えて創っていこうと思いました。
一方で「Breeze南山」が持っているラグジュアリーな印象をガラッと変えることも考えていませんでした。お互いに持っている要素をうまく引っ張りつつ、ミュージアムとその庭として、融合する様デザインを詰めていきました。
基本構想では「Breeze 南山」はダークで、シック、印象としては暗くてムーディーな感じの提案をしていました。それに対して「atre」は屋外空間で明るく日差しが降り注ぐエリア。同じ空間を明るさの違いで差別化しようと思っていましたが、進めていくうちに「Breeze 南山」サイドもどんどん明るい印象に変更して行き、最終的にはうまく融合しました。
福井:最初は、「Breeze南山」のゴージャスな空間に、どのように「atre」を融合させるかイメージできなくて、むしろ際立ってしまうのでは?と恐れていました。しかし進めていくうちに、表現したい空間コンセプトは違えど、両方のエリアで同じ素材を使うことで、それぞれの待ち合わせているイメージや良さを引き立たせ、館全体としてのイメージも分離してしまわないようにできることなど、発見のあったプロジェクトでもありました。
異文化間での多くの制約は
密なコミュニケーションと細やかな対応で解決
−「atre」出店テナントにおいては施工まで担当していましたが、イメージを具現化する際に気を配った点は?
朝比奈:テナントでそれぞれ、「台湾である程度事業をされている」「今回台湾に初出店」「日本で打ち合わせを進めたい」「日本にデザインを全て任せているデザイナーがいる」・・・などと状況は様々でしたが、みなさん共通していた思惑は、船場に任せているから、というものでした。
実施設計は 現地法人のTAIWAN SEMBAであっても、日本の企業にオーダーしている感覚でお客様は考えているので、現地の慣習でできないことを説明しても、「それは分かっている、でもそれを解決して欲しいから船場に頼んでいるんだよ」との想いが全てのテナントに共通していました。
そういう点では、先ほども話題に出た、コミュニケーションに気を遣いました。
異なる文化圏で、変えられない事実や慣習に対して、どのように伝えたら納得いただけるか?また、それら変えられない制約がある中で、我々がどのようにクライアントのニーズを具現化し、解決していくか?という部分が一番難しかったです。最終的には TAIWAN SEMBA に無理なお願いもいくつかしてしまいました。
しかし、今回のプロジェクトほど、密にコミュニケーションを取り合って細かく進めた案件は、知っている限り初めてだったと思うので、すごくいい経験ができたと思っています。
−コミュニケーション以外で、異なる文化圏で苦労したことは?
井戸田:材料問題は大きかったです。日本で普及している材料と同じものが台湾にあるとは限りません。日本人は嗜好が細かく、例えば緑色の素材が日本で10種類あるとしたら、台湾では2〜3種類しかない。日本では、できるだけイメージに近いものを多くの中から選べても、同じ感覚で台湾に持ってくると、選べる素材に限りがあるから、思い描いていたイメージと変わってしまうんです。そうなると、材料そのものを変えなくてはなりませんでした。
平田:デザインを考えても、台湾にある素材に全て置き換えて、調整し直したり、予算の制限を越えない範囲で、現地のスタッフに代替素材を探してもらったりしました。多くのテナントさんは当然日本にいらっしゃるので日本の感覚で考えます。しかし、実際に進める現地ではその感覚が通用しないので、細かな修正、調整が必要でした。
−今年1月に実際にオープンして、施設に集うお客様の反応をみて感じたことは?
朝比奈:オープンしたときは、正直ホッとしました。先ほども話が出ましたが、異国間でプロジェクトを進めるにあたって、様々な制約や、法規的な問題などクリアしなくてはいけないことが、とても多くあったので、オープンも延びてしまうかと正直思っていました。いざオープンするとお客様も沢山来ていてアトレ様も安心されていたので、本当によかったと思っています。
井戸田:予想以上にお客様が入っているので、これが長く続くといいなと思いました。仕上がりも日本の施設っぽさが、良い意味で反映されていると思います。
福井:お客様が実際に施設内を歩き、商品を手にとる姿を見ていたら、とても楽しそうにしていたんです。デザイン面では反省点が色々とありましたが、オープンしたときは本当に嬉しかったです。
平田:あの大きな商業施設の中で、「atre」のフロアに特に多くのお客様が集中しているのを見て、台湾でも「atre」が受け入れられている喜びを感じました。福井も言った通り、デザイン的に反省すべき点は多くあったものの、オープンしたときの喜びは大きかったです。