2018.03.01

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新潟の銘酒「久保田」直営旗艦店

新潟の銘酒「久保田」直営旗艦店

Project Member / プロジェクトメンバー

  • 葛谷 征巨

    葛谷 征巨

    Manager 第1事業本部東京営業企画部
    営業企画1課

  • 丸山 弘敏

    丸山 弘敏

    Manager 第1事業本部東京設計部
    設計3課

クライアントの想いを“翻訳”して表現する
それが“繋ぐ”ということ

葛谷:新潟県長岡市にある老舗の朝日酒造様から、自社ブランド「久保田」の発売30周年の節目に、より多くの人に「久保田」の真価を伝えていきたいとのご依頼があり、今回私たちがこのプロジェクトに関わらせていただきました。一般の工業製品と違い、醸造酒は生産地である場所の風土、伝統、気候、文化が大きく関わっています。そこで店舗のコンセプトは、銀座に居ながらにして、生産地、長岡 朝日にいるような体験ができる空間にすることとしました。ディスプレイやデザインについてのポイントは3点。1点目はエントランスからのアプローチです。歴史ある酒蔵のイメージとして、入店したお客様の期待感を高めること。2点目は店内に居ながらにして、長岡の四季を追体験できるような空間にすること。そして3点目は、銀座の中央通りに面しているメリットを生かして窓面を有効に使うことです。

丸山:今回は提案前に「なぜやるのか?」「どういう位置付けでやるのか?」「そもそもコンセプトはこれでいいのか?」「なぜリブランディングするのか?」といった根底の話を、クライアントに何度も丁寧に伺いました。おそらく、オリエンをすれば、その次にはデザインを見ることができると思われていたでしょう。少し渋い顔をされながらも、クライアントのこのプロジェクトに対する様々な想いを拾い集めることに時間を割いたのです。というのも、実際の設計に入ると、当然ながら面積や設備の制約などの現実的な課題をいくつも乗り越えなければなりません。ですので、白紙ベースで、エントランス、客席などのシーンごとに、何がどうあるべきか?ということを、コンセプト面と、ビジュアルイメージの双方で明確にゴール設定しました。そこに現実的な制約が加わると、どうなるか?ひとつひとつトランスレートしながら進めたので、クライアントにもわかりやすく最終的にご納得いただけたと思います。制約があることによってコンセプトの部分が崩れてしまわないように、という点には注意を払いました。

銘酒「久保田」の瓶が並んでいる画像
店主とお客さんが話している様子

葛谷:「久保田」のように、長い年月と手間をかけて作られた“伝統”という資産価値は簡単には代替できません。また、一番にアピールすべきものだと考えます。クライアントが気づかない、あるいは言葉にして表現できない価値を我々が聞き取り、体験をし、冷静に理解する。我々の仕事はそんなクライアントの想いを翻訳して、エンドユーザーであるお客様に伝えることだと思います。それがお客様とクライアントを“繋ぐ”ことなのだと思います。

丸山:メーカーにいらっしゃる方は、皆さん造り手です。造ることにおいてはプロですが、伝えることはご専門ではないと感じました。銀座久保田の料理長も、お酒の製造の方々も、日々当然のように行っていらっしゃることが、私たちにとってはとても新鮮な事ばかりで、大きな魅力の発見となりました。実際消費者が「久保田」に触れる機会がある場所は、酒店や小売店で陳列されているもの、高級料理店などで提供される場合などで、そこでは作り手の顔が見えてこない。クライアントには直営、直販をすることで生まれる、お客様と直接コミュニケーションを取ることの価値に気づいていただきたかったのです。

葛谷:卸の商品は自分でPRしづらく、造り手の想いをエンドユーザーまで届けるのは非常に難しい。店舗は一つの手段です。今回のご出店は商品と消費者をつなぐ新たな一歩になられたと思います。

店主の前で、お客さんが久保田のお猪口を掲げている様子
銀座 日本酒 久保田の看板

様々な価値を発見し
再構築していくことがSEMBAの使命

葛谷:今現在存在している企業や商材、地域、コミュニティ、などには必ず何らかの価値があります。私たち SEMBA はその価値を取りこぼすことが無いよう、余さずに発見し、未来を見据えて再構築していく役割があると思います。クリエイティブな仕事は何も無いところから新たに生み出すと思われがちですが、今あるものの価値をきちんと発見しないと、成功に導くのは難しいと思います。また、商品やサービスの価値を見定める一般消費者の見極めも高くなり続けていますので、小手先ではなく継続して価値を維持、実感できる、商品やサービスを提供できる施設環境を今後も考え続けていきたいですし、そういうことがSEMBA であれば可能なのだと信じています。

丸山:モノが売れないと言われる現在において、商環境が担う役割で大切なことは、その場に行って、見ること、体験することで、新らしい発見や驚きと出会い、楽しい気持ちにさせてくれることです。その喜びを家族や、友達と共有する、“場の力”というものがあると思います。モノを売りたい人が提供できるモノを100% そのまま受け取り、受け渡すのではなく、“場の力”をデザインによって高め、それを120%、200% に感じてもらえる、“喜び体験”を提供するのが我々の仕事です。またそれが、体験した人と、供給した人が“繋がる”瞬間でもあります。ネットで簡単に買い物ができる今の時代に、単純に棚を作って商品を並べるだけでは、“繋ぐ”ことはできないと考えます。場の“体験価値”を上げて、お客様とクライアントを繋げていくことがSEMBA の役割ですね。

銀座 日本酒 久保田の照明
銀座 日本酒 久保田のテーブル席

自分たちが気付かなかった魅力や想いをカタチにしてくれた

現在、日本酒「久保田」は9種類あります。全てを味わった方はそれほど多くはないと思います。銀座『久保田』では、そんな「久保田」の美味しさ、魅力だけでなく、一緒に味わう料理、酒器、お酒の温度など、お客様に新しい知識を提供し、新たな感動を与える、“和食の魅力の発信源”として頂きたく発売30周年の節目に店舗を構えました。

SEMBAさんには店舗のデザインだけでなく、私たちの想いを形にしていただきました。通常、業者さんは店舗が出来上がればお仕事が終わります。しかし、SEMBAさんには開店後も、パートナーとして様々なご意見を引き続きいただいています。また、我々が気づかなかった、「久保田」の魅力を違う視点から引き出してくださいました。今後も銀座『久保田』が私たちの想いを伝える場としてお客様に愛されるよう、引き続き力をお借りしたいと思っています。

川崎 泉

朝日商事株式会社 代表取締役社長

■所在地東京都中央区銀座8-8-8 銀座888ビル 3F
■業種割烹
■オープン2015年5月

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