CONTENTS

SEMBA PORTFOLIO STORY vol.13 「想像して、創造する」小学校6年生の図工授業でSDGsを考える

運動会や修学旅行、様々な行事が中止や縮小となった2020年。
この年に学び舎を後にした6年生が、
「最後にみんなで思い出に残るモノづくりをしたい」という想いを受け、
新渡戸文化小学校 図画工作科の授業を私たちでお手伝いしました。
今、世界中の人々が自分ゴトとして捉えなくてはならない
“地球の未来のためにできること”を、想像して、創造する。
廃材でオリジナルアートボードを作り、毎日通った通学路に飾ってリノベーションを行いました。

実施期間:2021年2月17日~3月10日

STAFF LIST

新渡戸文化小学校
山内 佑輔先生
VIVITA株式会社
穴山 信一氏
株式会社モノファクトリー
中台 明夫 氏、
河西 桃子氏
株式会社船場
神戸 暁、
櫻井 利芳、
立野 弘貴、
多ヶ谷 夏樹、
田林 映、
伊藤 翼、
古屋 利章、
米村 萌

“廃材”を身近なものに

東京都中野区の住宅街に佇む新渡戸文化小学校で、2021年2月17日から全4回に亘りVIVISTOP NITOBEで行われた6年生図画工作科の授業。空間デザインの設計や施工等に携わる私たち船場社員と、産業廃棄物由来のマテリアルの利活用のスペシャリストである株式会社モノファクトリーが講師を担当しました。
VIVISTOP NITOBEとは、2020年9月に新渡戸文化学園内に新設された子どもたちが創ってみたいモノや、挑戦してみたいコトを大人がサポートし、実現するためのクリエイティブスペース。VIVISTOP NITOBEの基本概念は、教室、教科、学年の枠をなくし教師も子どもたちとともに作り、学ぶこと。新渡戸文化小学校の山内先生は今回のワークショップを通じて、環境問題について学び、考え、廃材のアップサイクルを自分の手で作ることで“新しい価値を生み出す”。その体験こそが、この卒業制作のキーポイントと考えました。世界中にあふれる廃材のアップサイクルによって、通学路のリノベーションを行うのが今回の卒業制作プロジェクトです。

初日の授業ではまず「空間リノベーションとはどういうことか?」新渡戸文化小学校のリノベーションに携わる船場 神戸から実際の仕事を通してお話ししました。今回船場は、本校のリノベーションに携わるに当たり、みんながどんな教室だったら居心地がいいと感じるか?卒業制作のプロジェクトは参加したみんなの日常的な学校生活の様子を覗く機会でもあることを生徒たちに伝えました。
またほとんどの生徒がすでに授業などで学んでいるSDGsという言葉。循環型社会を目指すために、ひとりひとりができる事とは何だろう、そしてこれからの授業で何が始まるのか?少し緊張気味で聞いていた子供たちも、徐々にそれがワクワクに変わっていく様子がうかがえました。

次にモノファクトリーの中台氏から、身近なところから環境問題を想像する授業がスタート。
朝食が食卓に並ぶまでどれだけの人が関わっているか?
そして食材が入れられていた容器などが、ご飯を食べ終わった後どうなっていくのか?普段見ていない、見えていない部分を想像することで、どんなものが廃材となっているのか?それがどのように生まれ変わるの?あるいは処理できない廃棄物はどうなるのか?
普段生活している中では、見えていないことを考え、仲間と共有する時間を作りました。

そして“廃材”を身近にとらえることができたら、実際の廃材に触れてみます。触ったり、並べたり、遊んでみたりしながら・・・。それらの素材がどんな特徴でどんなイメージを持つか。廃材マテリアルを使って「激しい」と「優しい」をそれぞれに表現してもらいました。「え~!難しい~!」なんて言いながらも、生徒たちの想像力は柔軟で、様々な答えが出てきました。“捨てるもの”だと思っていたものに新しい価値を見いだすことが今回のテーマ。それぞれが表現した「激しい」も「優しい」も、それぞれが真剣に考え、たどり着いた答え。みんなの出した全ての考え方が正解ということを子供たちとともに学んだ初日でした。

「これがいい!」「これが好き!」をカタチに

2回目の授業では、“通学路のリノベーションをみんなで手がける”という、卒業制作の具体的な作品作りが始まりました。まずは前回の授業で学んだ廃材を材料にして、アートボードを作ります。
最終目標は何の変哲もない通学路のフェンスを、アートギャラリーとして楽しい空間にリノベーションすること。楽しい空間を構成するためのパーツである、アートボードは「これがいい!」「これが好き!」という個々のこだわりをカタチにする大切な作業工程でもありました。

アートボードとは何か?どんなものを作ればいいの?
そんな基本的なことを船場 立野から伝え、各々がテーマを考えました。自分たちのテーマにあったイメージのアートボードにするために、どんなマテリアルが適しているか?そのマテリアルをどのように使うか?マテリアルを選んで、並べて、見て、また選んで、並べて・・・。何回も試行錯誤が続けられました。

授業の後半では技術的なサポーターとして、船場 伊藤がマテリアルをボードに定着させるための様々な手法や道具、使い方などをレクチャー。ツルツルした素材をくっつけるには何がいい?軽いものは?重いものはどうやって固定する?子どもたちは見たことのない道具にワクワク…。環境問題という一見難しいテーマだからこそ、楽しむことが大切です。

3回目の授業では、前回まで進めたアートボードに足りないものを付け足したり、不要な部分を外したり、しっかり補強したり、色をつけたりして、アートボードを仕上げます。通学路を通る人にどのように見せるか?という視点も取り入れながら作り上げました。表現も様々、具体的なイメージで作られたアートボードもあれば、抽象的なイメージで表現されたものも。それぞれが「これがいい!」と思うアートボードができたようです。
そして肝心なのは作品のタイトル。好きのものを作ったのはいいけど、どんなタイトルをつけるか?自分が表現したものにタイトルをつけることも大切な作業です。最後にはそれぞれの想いがこもったタイトルが全ての作品につきました。

通学路がアートギャラリーに生まれ変わる

締めくくりとなる最終日。この授業はこれから中学生になる子どもたちにとって人生最後の“図画工作科”の時間。
いよいよ通学路のリノベーション作業、つまりアートギャラリーの飾り付けです。過去3回の授業の時のように、自分にとっての「これがいい!」ではなく、みんなにとっての「これがいい!」を探すのが一番の課題。みんながつ作ったアートボードをどのようにレイアウトするか?船場 櫻井のアドバイスは、みんなにとって気持ちいいバランスを見つけよう!ということ。そのためには、中心をどこにするか?間隔を均等に揃える?端を揃えてみる?それともあえてランダムに並べる?いろいろな例を見ながら生徒たちと一緒に考えました。

ここでも回答は1つではありません。まずは、教室の床を通学路のフェンスに見立てて、レイアウトのシミュレーションです。じーっとバランスを見たり、配色を考えてアートボードを入れ替えてみたり、お互いに意見を交換し合いながらアートギャラリーのレイアウトを考えてくれました。残念ながら天候の都合で実際に通学路への設置作業は断念。ここは我々スタッフが空間デザインのプロとして、生徒の考えたレイアウトで通学路に取り付けていきました。作業が気になって、風の強い中私たちを手伝ってくれた生徒もいました。

そして、何の変哲もなかった通学路がリノベーションにより楽しいアートギャラリーとして一新し、通りがかった他の学年の子どもたちの興味を誘う空間になりました。
廃材をアップサイクルすることで身近な場所をリノベーションし、空間に新しい価値を創造する今回のプロジェクト。“ゴミ”だと思っていたものでも、目線を変えると別の価値が見えてくる、そして私たちは、自らの手で新しく生まれ変わらせることができる。卒業制作を通じて学んだ事は今後、様々なことを“考える”時のヒントになる貴重な経験になったのではないでしょうか。そして同時に、子供たちと同じ目線で今回授業に参加した私たちにとっても、今後様々な空間づくりをする上で大切なことを再確認する、貴重な時間となりました。

新渡戸文化小学校公式サイト
VIVISTOP NITOBE公式サイト