ささいなきっかけから始動したリブランディングプロジェクト
特香園 桒畑 裕子常務:
最初のきっかけは、自動シャッターの取替です。不都合が出始めましたシャッターを今年こそは、と思いながらそのままになっていました。同時に外壁や看板、店内の照明、絨緞の張り替え等・・・色々リフォームしたい部分が出てきておりました。
しかし、部分部分のみですと、残した部分との統一感がなくなってしまいます。同時に、旧店舗も風格はありましたが、進化したい気持ちもあり今回全面改装に踏み切りました。

内村建設 和田 正浩マネージャー:
当初ご相談頂いた時点では少し改装するくらいと思っていたものですから、設計でなくコーディネーターを連れて行きました。お話を伺っているうちに、日本一のお茶屋さんの店舗をつくると判って、これは大変だ!と。ですからカゴシマ船場の松元さんにお声掛けし一緒に行っていただいたんです。
最初の打ち合わせではお盆明けにリニューアルオープンという事だったので、5月からスタートして8月を目処に工程を組んでいましたがちょっと急がないと、という雰囲気でした。結局進めていくうちに熱が入って、2018年の11月1日にオープンになったので、1年以上遅れました。
株式会社船場 大川武人:
当初、桒畑 政茂社長(以下、社長)とご相談させていただき、トントン拍子にデザインが決まり、図面まで引いた段階で、常務のこだわりに火がつき始めましたよね。(笑)最初のうちは、社長に遠慮されていたのでしょう。こだわりは少しづつ増え、どんどん盛りあがって止まらなくなっちゃったんですよね。
カゴシマ船場 松元 光成常務:
桒畑 裕子常務(以下、常務)には各方面に素材選びにまわっていただきました(笑)常務がこだわられた、壁や床はもちろんですが、突板の木目などまでにもこだわり、京都や、東京まで様々なメーカーへ足を運びイメージに合うものを探されましたね。
桒畑常務:
打合せを重ねるごとに、漠然としたイメージが具体的になっていきました。インターネットからの情報が溢れる現代社会において、お客様は確かな商品を目にされます。そういう商品を置く“器”である店舗には、よりこだわりを持ちたいと思いました。その為に費用が膨らんだとしても、年数を経る程 雰囲気・味も出てまいります。会長、社長も常に茶葉に対して本物を究め続けておりますので、後押しをいただきました。素材選びの際は、娘(桒畑取締役)の考えが大きな助言となりました。

大川:
終わった今だから思いますが、今回最初にトントン拍子で決めたそのままの形で終わらなくて良かったと、思っています。他人が考えたデザインで良い店舗が出来上がったとしても、愛着がわかないですよね。やはり実際に使われる方と一緒に悩んで考えて、材料を選んで、二人三脚で造り上げることで、より愛着もわくのではないでしょうか。
桒畑常務:
大川さんは、私共が選んだ素材を最大限にデザインに活かしてくださいました。また、大幅な変更も多々ありましたが、その都度快く受け入れてくださいました。その過程は大変でしたが、とても大事な部分でもあり、またひとつひとつが具体的になっていく打ち合わせは、充実した時間でもありました。そのお陰で、最終的にはイメージ通りの雰囲気に仕上がり、工事が終了しました時には、打合せも終了ということで達成感と同時に空虚感も残る程でした...。
強いこだわりが呼び寄せたご縁
大川:
何度も賞を獲ったお茶ですから、しっかり味わえる場所を設えたいと思い、試飲カウンターは最初のプランからもりこんでいましたが、常務は一度、無くそうとお考えでしたよね。
桒畑取締役:
最近のお茶屋さんは、喫茶部分にカウンターシンクが設けられていることが一般的になっています。
試飲カウンターと聞いたときは、今の流行りにあわせて設けたと混同される懸念があり、当初は躊躇しました。しかし、今回の設計では、社長のアドバイスにより全体的に材質を揃えて統一感を出しましたので、日本文化の釜の設えが引き立ち、茶葉をゆっくり味わえる店の看板となりました。また、エントランスが全面ガラス張りなので、夜はもちろんですが、昼間も外から良く見えるので、その違いも外から感じていただけるとおもいます。
そういえば、エントランスにありますカエデも大変でしたね。植え付け予定の木を事前に持ってこられましたが、イメージが大変違いました。

大川:
お庭は、メンテナンスもあるので、地元の造園会社さんにお願いしました。
この年は酷暑で葉も焼けて良い木がなく、植える10日前くらいにやっと持ってきていただいたのが、何かもうひとつで・・・植え付けまで時間はありませんでしたが、もう一度探して欲しいとお願いしました。それまで何ヶ月も探してもらって、無かったものが、急に出てくる訳ないな・・・と思いつつ。
正直、かなり無茶を言ったと思いますが、植え付け3、4日前に「良いのが見つかりましたよ!!」、と連絡があり、現場に運ばれてきた木を見たときは、初めて人に“無茶を言って良かった!”と思いましたよ!(笑)植えている時会長がご覧になって、目を見開いていたので、気に入って下さったのだとすぐに分かりました。
桒畑取締役:
社長も30分程外で足を止め 写真を撮っていました!昼間も外から店内を見渡せ、ファサードの樹々とよく調和しています。この枝ぶりでファサードがまとまり店鋪の立派なシンボルツリーになりました。皆様のこだわりが呼び寄せたご縁なのだと感じました。
和田マネージャー:
造園業者さんの名前も“えんもゆかり”と言うのもご縁でしょう。(笑)
大川:
あの時、最初の木で進めていたら、今ここにあるカエデに巡り会うこともなかったので妥協せず最後まで粘って良かったと思います。木は造るものでなく、在りものを持ってくるしかありません。
良いイメージに仕上がればいいなと思って進めていましたが、あのカエデとの巡りあわせでプラン段階の想像以上のものに仕上がりました。

桒畑常務:
通りがかりの方にも「街中にこんなオアシスがあるとホッとしますね」と。ご来店のお客さまには、暖簾を含め「京都のお店みたいね」とお声かけいただきました。
桒畑取締役:
今までいらっしゃってくださったご年配のお客さまも新しいお店をすーっと受け入れてくださり、ご来店を楽しみにしてくださいます。まとめ買いをなさっていたお客さまが、頻繁に来るようになり、立ち寄られた際はゆっくりくつろいでくださっています。
観光にいらした方も、“何のお店だろう?”と足をとめてくださいます。お店が変わることによって、多くの新しいお客さまに、“お茶の特香園”を知っていただくことができました。何よりも今までいらっしゃらなかった若いお客さまが増えたのが嬉しいですね。